黙って去る顧客の「声」 〜田坂広志さんのご本から 6

 「黙って去る顧客」も、こころを澄ませ、注意深く見ていると、かならずその文句や不満を「無言のメッセージ」として発しています。たとえば、企画書の説明であれば、説明の最中の表情、頷き方、首の傾げ方、目の配り方、こちらと目を合わせたときの視線、何気ない質問のニュアンス、やりとりの呼吸、こちらからの問いかけに対する答え方の雰囲気、会議全体の空気、最後に別れるときの余韻。そうした、細やかなものに気を配っていると、顧客の「無言のメッセージ」は、必ず理解できます。
 問題は、私たちに、それを気づく力量があるかどうかです。そうした「無言のメッセージ」を聞くためには、何よりも細やかな気配りや繊細な感受性、さらには直観力や深い洞察力など、人間としての高度な能力が求められるからです。
 そして、そうした高度な能力を身につけるためには、たとえば、一回一回の顧客への営業において、その場に全身全霊で参入するという修練が求められます。身心ともに疲れ果てるほどの精神の集中力や持続力を要する厳しい修練が求められるのです。そうした厳しい修練の時代に、私たちを支えてくれるのは、「顧客を鏡として成長していきたい」という強い願いだけかもしれません

顧客を鏡として成長していきたい..とりもなおさずWINWINになる。ただげんてんがみずからのねがいだからこそ、うそがないですね、きっと
仕事の思想―なぜ我々は働くのか (PHP文庫)