「考える能力」を尊重するトヨタ 〜柴田昌治さんのご本から 4

 『人間尊重』は言葉どおりに人間を尊重すること。『人間性尊重』は、人間の持っている『「考える能力』を最大限尊重するのを言います」 トヨタ生産方式の生みの親と言われる大野氏の指導はその厳しさでよく知られている。しかしその厳しさは同時に、人がどういうときに労働強化を強いられていると感じるか、を問い質す姿勢に裏付けられている。そこには、人間の本質をきちんと押さえて大切にしようとする人間観がある。大野氏や張社長のこの言葉から、トヨタという組織に”「自ら考える」ことの大切さ、人間の智恵は無限だ、その可能性を信じる”という人間に対する見方が深く根付いていることを知ることができる。これは”上司が鬼となって部下を調教する”のとは正反対の見方である。

 管理志向の強い人間観を持つ人の考え方は、人間というものを「あるべき論」つまり、人間というのはこうあるべき、という理想的な型がまずあって、それに対して現実の彼には何が欠けているのか、何が足りないのかという発想から出発する。理想像に欠けている人間として、欠けている部分を埋めるように努力しろという考え方である。 こういう考え方は一見当り前で、理想像に対して努力をしていくのだからそれでいいではないかと見られがちである。問題なのは、この理想像をつくり上げるという考え方は、どうしても理想像が固定してしまいがちになるという点だ。答えは1つという感覚がそこにはある

にんげんせいそんちょう、ふかいことばですね
トヨタ式最強の経営―なぜトヨタは変わり続けるのか