安心の日本と信頼のアメリカ 〜山岸俊男さんのご本から 3

 社会的ジレンマというのは、お互いに協力し合えばみなが利益を得ることができるのに、それぞれの人間が自分の利益だけを考えて行動すると、誰もが不利益をこうむってしまう状況のことです(入門書としては、山岸俊男社会的ジレンマのしくみー「自分1人ぐらい」の心理の招くもの』サイエンス社、1990年があります)。(中略)


 社会的ジレンマの問題に関しては、これまで世界中で1000を越える実験研究が行なわれてきましたが、その中で明らかにされたもっとも重要な点は、他の人たちが協力してくれるという期待がもてないときには、ほとんどの人が協力的な行動をとらないということです。実験に参加した大多数の人たちは、自分だけの利益のために他人に迷惑をかけても平気でいられるほど利己的ではなく、もしみんなで協力し合うことができるのであれば自分も協力したいと思っていました。しかしそう思っている人でも、他の人たちは協力する気がないのではないかと心配になると、結局は協力しなくなってしまいます

さいしょのいっぽ!
安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)