集中力 〜宮崎正裕さんのご本から 2

 全日本選手権で優勝する前は集中力が切れてしまうようなことは何度もありました。その前は2位や3位はあったのですが、平成2年の優勝がわたしの初めての全国タイトルでした。優勝を一つ掴んでみて初めて「優勝するということは、ここまで緻密にいかなければいけないものなのか」ということを味わった。そのとき集中力の大切さを感じたわけです。もともと集中力を持っていたということではなく、味わって初めて感じたんです。
 具体的にいえば、ひとつ上げられるのは、先のことを考えたりしないこと。優勝する以前は、たとえば準決勝まで進んだときに「あと2回勝てば優勝だ」ということを考えたりしたんです。今はそんなことは全然考えませんし、平成2年のときもひとつひとつの積み重ねだと思っていました。「今日は(優勝するためには)5試合(勝つことが必要)だ」とか「今日は6試合だ」などと考えてしまうと、疲れてしまいます。1試合だけで優勝するわけではないのですが、「まず1試合」というつもりで考える。
 それと関連することかもしれませんが、最後の試合(決勝)になったときには「後がない」ということを考えます。そのときだけ、後がないからここで自分の力を出し切ろうと考える。そういった意味で全日本選手権の決勝では、早い時間の決着が多いのかもしれません。周りからは決勝になれば気分が乗っているからだと言われますが、そうではなくて、後がないから悔いがないように技を出したいという気持ちの現れなのです

てっぺんだからこそみえるせかい、でしょか
宮崎正裕の剣道 (剣道日本)