流れ(2)五分五分に戻してから捨てて打つ 〜宮崎正裕さんのご本から

 防戦一方でした。相手にグーと攻めて来られ、旗も一本上がったりして周りも沸いている。そのなかで「よし、捨て切っていくぞ」と捨て切ると、だいたいダメなんですね。そんな場面で捨て切ってしまうと、半分投げ捨てている形になってしまい、相手に一本を与えることも多い。気持ちが充実していないと本当に捨て切ることは難しいので、ある程度態勢を整えて、流れも五分五分、悪くても四分六分くらいにしておく。それから捨て切ることを考えるようにしています。この試合では、前半は相手が八割方押していたと思います。
 流れを戻すためには気持ちもありますし、打突や反則によることもあります。今回の場合は、まず出足を封じることを考えました。(中略) それによって少し流れが切り換わってからは「いけるかも」と思うようになりました。ふりかえると体力的にも疲れました。が、試合を組み立てていく上で、時間的な長さはあまり感じなかった。
 というよりもむしろ、時間を掛けなければ、流れを盛り返せないという気がしました。それにどこまで自分の体力がもつかという心配はありました。これはもうがまんしかないなという気がしていました。集中力は切れなかったと思います。切れてしまえば、そういう発想も思い浮かびませんし。「もう行ってしまえ」という感じになります。そうしたいいかげんな試合をしないためにも、自分自身の気持ちが切れないよう、充分注意しています

1ねんぼーずには空想世界ですが、がまんもやっぱりたいせつですね、はやらないですけれども
宮崎正裕の剣道 (剣道日本)

ps)全日本選手権を6度制し、戦後剣道史上最高の戦績を残した「努力  の天才」だそうです、1963年のご生誕