個人主義の神話とは 〜ウエイン・ベーカさんのご本から 3

 しかし、個人主義は神話にすぎないというのが私の主張である。この15年間、最も強い影響力を持ってきた社会科学者のジェームス・コールマンは、この個人主義を「現代社会において広く浸透している虚構」と呼び、次のように述べている。「この虚構とは、独立した個人が社会を構成し、各自が自分の目標を目指して行動していることを指す。また、このような個人の行動が組み合わされることで社会システムが機能するということ自体が虚構なのだ」。
 この虚構あるいは神話というものは、世界の情勢や動きを把握するうえで、障害になりうる。その原理に従っていると、成功のチャンスが遠のき、給与は上がらず、昇進の道は狭まり、創造できる価値は減少し、仕事の処理能力は低下し、さらには健康、幸福、冨まで失ってしまうのである。また、人生における大きな可能性さえも絶たれてしまう。しかし、まわりの人との関係によって発生する役割を理解し、そこに存在する資源を見つけて活用していけば、仕事、家庭、コミュニティなど人生のあらゆる場面においてさらなる成功が可能になる。
 まずは個人的な目標達成の教訓を「捨て去る」ことが最初のステップである。それを実践するために人々がよく口にしたがる才能、知性、教育、努力、目標、幸運といった「個人的」属性に対し、ネットワークがどのように関わっているのか、1つひとつ考えてみよう

とってもにほんてき(かつての)!?
ソーシャル・キャピタル―人と組織の間にある「見えざる資産」を活用する (ミシガン大学ビジネススクール)