簿外入金・架空出金の話 〜山田真哉さんのご本から 2
「私たちの仕事は<企業の発表する数字が正確である>ということを証明することよ。だから、私たちは確かに裏金を発見したけど、帳簿をちゃんと訂正するかどうかの判断は大伴飲料の人たちがすることなのよ」 萌さんは僕をさとすように言った。
「じゃあ、もし、裏金について大伴飲料が公表しなければどうなるんですか?」
「そうね。そのときは会計士としての権力を使うのよ。つまり、<この企業の発表する数字が正確である>ということを証明してあげないの。まあ、こんな権力使っちゃったら、会社は潰れちゃうかもしれないから、できれば使いたくはないけどね」 萌さんはいたずらっ子のような表情で笑った。
「いい? 私たちは経済の世界に1つしかない鏡なの。企業の良い処も悪い処もそのまま映し出す真実の鏡。鏡は決してしゃべらないし動かない。でも、絶対嘘はつかないから、みんな信頼して鏡を見てくれるのよ。だから、これからも鏡をピカピカに磨いていってね」